東洋思想と「氣」

気とは?

 

「気」と聞くと、話を聞く前から、ちょっと怪しい?という感情を持たれる方も多いと思います。

昔から人は見えないものに対して抵抗感を抱きがちです(電磁波や物理でいうエネルギーも見えないのですが…)。

 

しかし、やる気、気になる、気が利く、気が散る、気が滅入る、気が合う……などあらゆる場面で言葉として「気」が用いられ、無意識に使用していることも事実です。

 

現代日本での「気」

 

辞書では「気」について、以下のように解説されています。

 

①息、呼吸 ~呼気・吸気・気管・気息…
②ガス体 ~大気・気化・空気・気圧・湿気・換気…
③天地間に生じる自然現象 ~気象・気温・磁気・天気・電気…
④宇宙と人間の根底にあるとされるエネルギー ~元気・正気・生気…
⑤様子や気配 ~雰囲気・気味・景気・気運…
⑥心の働き、意識 ~気分・気力・短気・根気・平気・本気…
⑦1年を24等分した期間 ~二十四節気

 

 

古代中国での「氣」

 

元々古代中国では、「気」を空間と時間の具体的な出来事として解釈し、宇宙万物を形成する最も基本的な物質として捉えていました。

現代の日本での「気」でいうと、④宇宙と人間の根底にあるとされるエネルギー、に近いと言えます。

形も無く、混沌として広がっているのが「宇宙」であり(太陰)、天地未分化だった中から「気」が生じたと考えます。

 

気は分化し、軽く澄んだ「清軽な気」である陽気が上昇して「天」となり、重く濁った「重濁な気」である陰気が沈んで「地」となり「天地」が始まりました。

 

天地陰陽の「二気」から「四気(四季)」が生じて、それによって人を含めた万物が生じた、と考えていました。 ~『淮南子』

 

人間の精神は「天の気」=「陽」、肉体は「地の気」=「陰」、

「生」はその精神と肉体との結合、「死」は両者の分離、

であると説いています。

 

人は両親から「陰(母)」と「陽(父)」の精気を受け、これらが合わさり1つの生命ができ、「天の陽気(空気中の活力源)」と「地の陰気(飲食物中の活力源)」を取り入れて生命活動を維持している、としています。

 

そして、体内の陰陽の気が調和していれば「健康」であり、陰陽の気が不調和になると「疾病」になり、気が散逸すると「死」に至ると考えます。

以上が、東洋思想での「気」の考えです。

 

氣と東洋医学

東洋医学の「経絡(けいらく)」というのは、この「気」の通り道であり、ツボ(経穴=けいけつ)はこの経絡上の反応点(=治療点)になります。

 

これらの氣の考えを「幹」と考えると、「枝」としての氣は、人体の臓腑や組織の生理機能を指します。

例えば、消化管で考えると、物質としての「氣」は胃や腸など臓腑そのものを指しますが、生理機能としての「氣」は胃腸の消化機能や吸収機能を指す、という感じです。

ですから、鍼灸経絡治療では、症状がどうあれ人体の氣の調和をはかり、自然治癒能力を高めて治癒へと導きます。

その上で、自然と調和した陰陽のバランスの取れた日常生活を心がければ、病気になりにくいという考えになるのです。

 

世の中、何事もバランスです。食事も衣服も友人も情報も、偏ることなくバランスを考えると良いでしょう。