七十二候(しちじゅうにこう)
以前に、「東洋思想と季節の関係」というテーマを掲載し、その中で四季をもっと細かく分けた「二十四節気」を紹介しました。
今回は、この二十四節気のそれぞれの間の約15日間をさらに約5日毎に3つに分けた『七十二候』をご紹介したいと思います。
二十四節気と違い、七十二候はその名称が何度か変更されているようです。古代中国のものが、江戸時代に入って渋川春海ら暦学者によって日本の気候風土に合うように改訂されたのが「本朝七十二候」です。現在では、明治7年の「略本暦」に掲載された七十二候が主に使われているとのことです。
その季節の動植物を中心に自然界の様子を書いていることが多く、解説せずとも仮名文を読むとおおよその意味が分かると思います。
春
立春 (2月4日頃)
初候:東風解凍 「こち(はるかぜ)こおりをとく」
次候:黄鶯睍睆 「うぐいす なく」
末候:魚上氷 「うお こおりをいずる」
雨水 (2月19日頃)
初候:土脉潤起 「つちのしょう うるおいおこる」
次候:霞始靆 「かすみ はじめてたなびく」
末候:草木萌動 「そうもく めばえいずる」
啓蟄 (3月5日頃)
初候:蟄虫啓戸 「すごもりのむし とをひらく」
次候:桃始笑 「もも はじめてわらう(さく)」
末候:菜虫化蝶 「なむし ちょうとなる」
春分 (3月20日頃)
初候:雀始巣 「すずめ はじめてすくう」
次候:桜始開 「さくら はじめてひらく」
末候:雷乃発声 「かみなり すなわち こえをはっす」
清明 (4月4日頃)
初候:玄鳥至 「つばめ きたる」
次候:鴻雁北 「こうがん かえる」
末候:虹始見 「にじ はじめてあらわる」
穀雨 (4月20日頃)
初候:葭始生 「あし はじめてしょうず」
次候:霜止出苗 「しもやみて なえいづる」
末候:牡丹華 「ぼたん はなさく」
夏
立夏 (5月5日頃)
初候:蛙始鳴 「かわず はじめて なく」
次候:蚯蚓出 「みみず いづる」
末候:竹笋生 「たけのこ しょうず」
小満 (5月21日頃)
初候:蚕起食桑 「かいこ おきて くわを はむ」
次候:紅花栄 「べにばな さかう」
末候:麦秋至 「むぎの とき いたる」
芒種 (6月5日頃)
初候:螳螂生 「かまきり しょうず」
次候:腐草為蛍 「くされたる くさ ほたると なる」
末候:梅子黄 「うめの み きばむ」
夏至 (6月21日頃)
初候:乃東枯 「なつかれくさ かるる」
次候:菖蒲華 「あやめ はな さく」
末候:半夏生 「はんげ しょうず」
小暑 (7月7日頃)
初候:温風至 「あつかぜ いたる」
次候:蓮始開 「はす はじめて ひらく」
末候:鷹乃学習 「たか すなわち わざを なす」
大暑 (7月22日頃)
初候:桐始結花 「きり はじめて はなを むすぶ」
次候:土潤溽暑 「つち うるおうて むしあつし」
末候:大雨時行 「たいう ときどきに ふる」
秋
立秋 (8月7日頃)
初候:涼風至 「すづかぜ いたる」
次候:寒蝉鳴 「ひぐらし なく」
末候:蒙霧升降 「ふかき きり まとう」
処暑 (8月23日頃)
初候:綿柎開 「わたの はな しべ ひらく」
次候:天地始粛 「てんち はじめて さむし」
末候:禾乃登 「こくもの すなわち みのる」
白露 (9月7日頃)
初候:草露白 「くさの つゆ しろし」
次候:鶺鴒鳴 「せきれい なく」
末候:玄鳥去 「つばめ さる」
秋分 (9月23日頃)
初候:雷乃収声 「かみなり すなわち こえを おさむ」
次候:蟄虫坏戸 「むし かくれて とを ふさぐ」
末候:水始涸 「みず はじめて かる」
寒露 (10月8日頃)
初候:鴻雁来 「こうがん きたる」
次候:菊花開 「きくの はな ひらく」
末候:蟋蟀在戸 「きりぎりす とに あり」
霜降 (10月23日頃)
初候:霜始降 「しも はじめて ふる」
次候:霎時施 「こさめ ときどき ふる」
末候:楓蔦黄 「もみじ つた きばむ」
冬
立冬 (11月7日頃)
初候:山茶始開 「つばき はじめて ひらく」
次候:地始凍 「ち はじめて こおる」
末候:金盞香 「きんせんか さく」
小雪 (11月22日頃)
初候:虹蔵不見 「にじ かくれて みえず」
次候:朔風払葉 「きたかぜ このはを はらう」
末候:橘始黄 「たちばな はじめて きばむ」
大雪 (12月7日頃)
初候:閉塞成冬 「そら さむく ふゆと なる」
次候:熊蟄穴 「くま あなに こもる」
末候:鱖魚群 「さけの うお むらがる」
冬至 (12月22日頃)
初候:乃東生 「なつかくれくさ しょうず」
次候:麋角解 「おおしかの つの おつる」
末候:雪下出麦 「ゆき わたりて むぎ いづる」
小寒 (1月6日頃)
初候:芹乃栄 「せり すなわち さかう」
次候:水泉動 「しみず あたたかを ふくむ」
末候:雉始雊 「きじ はじめて なく」
大寒 (1月21日頃)
初候:款冬華 「ふきの はな さく」
次候:水沢腹堅 「さわみず こおり つめる」
末候:鶏始乳 「にわとり はじめて とやに つく」
七十二候は養生法というよりは、自然の生き物を例えに使った、その時期の目安と言えます。二十四節気と合わせて考えると興味深いものとなりますので、是非合わせてご覧ください!